インタビュー実施日 2002年11月27日

本日は、株式会社マロウ様にお伺いしました。よろしくお願いいたします。
まず、御社の業務内容をお話しいただきたいと思います。

 

プリント基板の設計がメインです。そして、それに関する周辺業務を行なっております。
回路図入力、部品表作成、また、部品情報としてのマクロの作成などです。
当然、設計したプリント基板についての試作や、部品マウントまでもお受けしております。




東京が本社ということですが、その他の拠点はどちらになるのでしょうか?

 

国内は長野、上越に、それぞれ設計部隊があります。あと今後の方向としては、
まず在宅勤務を来年度中に伊東の方に、そして2年後、鹿児島に2名を考えております。
実は現在、大分にあるお客様のところに弊社から技術者が3名入っており、そのうちの2人が
鹿児島出身でして、2年後を目途に在宅勤務を開始させようと思っております。

九州一円セミコンバレーになっておりますので、将来性があると考えて、拠点は鹿児島と
いうことで進めています。




現在の社員数はどのくらいになるのでしょうか?

日本が54人ほどで、シンガポールに7人おります。ちょうど61人ですね。



設備につきましては、いかがですか?

 

I-CADが多いです。それからCR-3000PWS・CR-5000SD、BD。
この比率ですが、I-CADが「2」に対して、CR関連が「1」ですね。
あと、アレグロ2台と、パーツセイバーです。昨年くらいから、お客様の要望がありまして、
将来的には図研さんのBDが増えてくるという方向です。




最近、シミュレーション、またはSIですとか、EMCの部分をセットメーカさんが望まれていると思いますが、
これに対して設計メーカさんが悩まれているということをよく聞きます。
御社ではどのように取り組まれているのでしょうか?

  ちょうど5年前くらいからシミュレーションの必要性を考えまして、4年前に導入しました。
ご存知の通り、富士通さんのSigalですね。これで伝送回路解析、波形解析とか
ノイズ解析とかクロストークですとか、これは4年間やってきたおかげで、ほぼ完璧だといえます。
今のところはIBISのデータをもらって、その検証から開始します。プリ・シミュレーションの結果に
基づき、お客様と話しながら、回路図そのものを、主にダンピング抵抗やパスコンの数とか値を
直していただきます。それでパターンニングをして、最後にポスト・シミュレーションを行い確認
します。この段階では、まず問題がないですね。これは間違いなく成果が出てきているという
ことで、自信を持って対処できます。

ただし、AccufieldでEMCのシミュレーションをやっておりますが、私はこれはかなり難しいと
思いました。なぜかといいますと、お客様にプレゼンテーションすると、言われることは、
「実機との相関性はどうですか」ということですね。
「実機で測定した内容」と「シミュレーションの内容」との比較です。
我々の場合、基板単体でやりますからね。

お客様の言われる「実機」というのは、基板が1枚だけということはありえないわけです。
筐体に入ったもののことを言っているわけで、筐体に入ったら、当然いろいろなことが
変わってきます。そこにいろいろなハーネスがついたり、何枚もの基板が合わさると、
このシミュレーションとの相関関係はどうなのかと聞かれても、非常に難しいんですよ。

我々、EMC対策をした基板設計ということで、4年間で実績を上げたのですが、基板単体で、
いかにノイズを押さえるかということを主に考えているわけです。

ここ2〜3年、お客様とのいろいろな話しの中で、EMCのシミュレーションができるということに
非常に設計者が関心を持たれています。設計者は回路設計のノウハウもありますし、
シミュレーションもできるわけです。問題はEMCですよ。それを実機でやるよりも、試作の
段階でできることが一番いいわけですからね。

そういう意味では、1枚ではできますが、相関関係ということには私も興味を持っているので、
ぜひ、測定値をいただこうと思い、波形写真などももらっています。
これでは、今まで問題はありません。

Accufieldについて言いますと、ここ2年の結果では、実機の測定値よりも、少々多めに
出るという「傾向」がありますね。ぼんやりとしているのですが、今までの経験上での結果が
出ています。

お客様が言われる、「相関性はどう? 精度についてはどうなのか?」ということと、「筐体に
組み込んだ時はどうなるか?」ということが問題なんですね。

実は長野電子回路研究会の研究員、久保田さんは、Accufieldを使用したEMI解析に
おいて、全国で5つの都道府県の方たちと共同研究をされており、レポートなどももらって
おります。この方たちの知恵をお借りして設計支援を行なっております。

実は、来月早々に都のEMCの暗室・測定室を見学させてもらいながら勉強をすることにも
なっております。同時に長野県で、そのような研究をされているメーカーさんのエンジニアの
方たちとネットワークを組んで共同で研究して、精度のあるものの開発を行なうことを目標
としております。




シミュレーションも長くやられていらっしゃいますが、御社の設計の中での特徴といえるものは、いかがでしょうか?

  私は最近考えていることがあります。「いいものを速く」はもちろんのことですよね。
どのような仕事でもこのことが言えると思いますが、これは大変な条件です。
もう一つは「お客様に満足してもらわなくては、何にもならない」ということです。
いくら自分達が高い技術を持っていたとしてもだめですよね。それよりも『納品したもの』と
『納品するまでの過程』に対しての満足度ですよね。それがとても大切なように思っています。

そういう意味では、特徴として、パターンニングの技術にプラスしてスピードや高密度な技術、
そして同時に電気的性能がでる設計、お客様が意図したような設計ができているかどうかと
いうことです。必ずしもシミュレーションだけがすべてではないんですよね。
むしろ、「性能が出る設計が速くできます」ということが、我社の特徴と言えると思います。




ボード設計費用、シミュレーション費用・・・という時、お客様には二つの費用提示をすることが多いのでしょうか?

  やはり、多いですね。でも私が考えていることは、それとは反対です。
むしろ性能が出るから、500万円とか、1000万円といえるのです。要は、お客様が描いている
性能が出る設計ができるかということですよ。どんなにいい回路図があって、適切な部品選定を
したとしても、基板の設計で商品の性能は決まってくるんです。そこには、シミュレーションがどうの
ということではないんです。それを分けて考えること自体がおかしいと思います。確かに世の中、
1ピンいくらとか、密度がどうとか言っておりますが、それで性能が出るのかというと、違うと思います。
ひとつの基準にはなりますが、性能については関係のないことだと思います。

我々の仕事は変えていかなくてはいけないのではないでしょうか?
言われたことだけやっていたのでは、プロとしては情けないと思います。
ノウハウであれ、データベースであれ、持っていなくてはならないわけです。
そのためのシミュレーションということになります。




最後になりますが、今後の事業計画、動向をお聞かせください。

 

一つは、通信関連のコストが下がっていき、ブロードバンドになってくるので、世界中どこでも
仕事ができると考えています。その時、社員個人の生活を重視したいと考えると、
「在宅勤務」ということがあります。
それから日本と海外も含め、「お客様のそばでサテライトを持ってやっていくこと」ですね、
この二つの方向でやっていきたいと考えております。

アメリカに現地法人を作りましたし、シンガポールはもう11年になります。
今年はいよいよ、イギリスのベージングストークにも作ります。
今月いっぱいで現地法人ができる予定です。

お客様のそばでサテライトを開いて仕事をするということは、日々刻々と周りが変わる中、
いつでもお客様の要望を取り込めるということです。ですから、もっともっと、広く散らばして
いこうと考えています。そして同時に「品質の向上」と「技術の向上」をどのようにしていくか
ということを大きな課題として考えていきたいと思っております。




わかりました。本日は、お忙しいところ、貴重なお話しをありがとうございました。


長岡様、お忙しい中、ご協力いただきまして、本当にありがとうございました。
アルターシステム梶@松 永